トップの力量
物事が上手くいくか、いかないかは、トップの力量にかかっています。トップが、事業に対する本質と方法論[道理]と正しい行動を正確に弁えていないと、事業はいつも不安な状態になります。
最近あった事例ですが、結論からいいますと、依頼した商品が出来上がってきたら、注文内容と異なった商品が送られてきたというものです。
担当者は「正しい資料送っておいたのに」という。相手の担当者はそうは思っていなかったので、その資料があると混雑するので「捨てた」という。「なぜ捨てた」と聞くと、前にOKという資料をもらっていたからという。そのOKの資料に訂正箇所があったから再度送ったという。こうしたことはあってはならないことであります。しかし結局は、出来た製品を破棄して、新しく造ることになった。双方にとって大きな損失である。
こうした間違いが常に起これば会社は倒れてしまいます。また、こうした一つの問題が会社の将来性を予測できるといっても言い過ぎではないでしょう。
こうしたときは、トップは速やかに業務の工程・チェック機能の改善をしなければなりません。こんなとき「これからは気をつけて」だけで終わっては、大変なことが次に起こることになります。天をあまく観てはいけない。つまらないトップの力量には、天は力を貸さないことになるものです。よくよく心しなければいけない。
この事例を見てもわかるように、結局は担当者でなくて、会社が損害を受けることになります。それはトップの責任問題であります。何事も成否のかぎはトップの一身にかかっています。その責任を逃れることはできません。
例えば、木材を切るときに、棟梁が墨で線引きをします。切りおとす人は、その線に従って切ることで目的はかなえられ建築の材料となり役立ちます。しかし、線引きが間違っていると、その木材は廃材となってしまいます。
このように、正しいトップの元では役に立つ人材が育ちますが、力量のないトップの下では、まともな人材は育たないことになります。
事業を成功に導くには、先ず、トップとしての力量を毎日弛むことなく向上させていくことが大事です。もし、部下が進歩しないと思ったときは、トップが進歩していないことに気づかなければ、事業の伸展はないものと考えて間違いありません。
「技能に応じて職に服する。力量がその任に耐えれば、荷は軽い。技能がその職に適えば、仕事はやすい。才の大小長短を問わず、各自が適所にはまれば、天下はすなわち斉一(ととのう)であって、逸脱は起こりえぬ。聖人はこれを併せ用いて、さて、世に無用の人材なし。」とあります。
このように世の中には不要な人材などはいないのであって、人材を見抜けないのはトップの力量がないからである。と戒められています。管理者はこれぐらいの力量をもって事業はしなければ発展しません。「相手がダメだから」と、いつも責任を回避しているようでは管理職は失格です。