商道(2)利益

淮南子『詮言訓』に「事業は衆民と共同でなされるもので、功績は時勢とともに完遂するものである」とありますが、事業というものは一人で成り立つものではなく、色々な専門的技術をもった人たちが寄り集まって成り立っています。また、功績、即ち利益というものも、その時代の時勢や時流に順応して得られるものであって、自分ひとりの力ではないことを厳に認識しなければならない。

そもそも商い[事業]での「利益」というものは、本道の副産物であって一元的なものではありません。利益とは「他を益することによって、己を利する」という意味であります。大丸百貨店の初代が残された訓戒のなかに「先ずお客さんに喜んでもらうことによって、その後に利益がついてくる」といった文を読んだ記憶がありますが、それが「利益」という本筋であります。

利益に対する精神が間違っていると、一時的には儲かったように思っていても、どこかで必ず大きな損失に遭ったり、失敗したり、破滅に向かっていくのが必然的な原則であります。過去において、倒産した多くの会社や商店は、経営に対する利益概念が間違っていたからの結末といわなければなりません。

 

淮南子『兵略訓』に

「明王が兵を用いるのは、それが天下人民のために害悪を取り除き、万民と共同してそれぞれ利益を享受するためのものであるから、人民の用(はたら)きたるやあたかも息子が父のためにまた弟が兄のためにするほどの[自発的]ものだ。その威力の加わった勢いは、山をも崩し堤防をも決壊させるようなもので、いかなる敵も立ち向かえない。」とある。

この言葉から引用すると、事業というものは、共同してそれぞれの利益を受けることができるから、社員は自発的に行動するのである。そうした組織の勢いというものは如何なることにも立ち向かう力をもっているものである。ということである。

 

だから、利益は、相互扶助の精神と、社会貢献の精神と、適正利潤の算出を忘れてはなりません。

 

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