二宮尊徳翁の訓えより
水門を閉じて分水を争う
『師はこういわれた。財宝を生み出して利を得るのは農工であり、財宝を運用して利を得るのは商人である。財宝を生み出し運用する農工商を勤めないで、しかも富裕を願うのは、たとえば水門を閉めて分水を争うようなもので、智者のすることではない。
それなのに世間で智者と呼ばれる者のすることを見ると、農工商を勤めずに、ただ小智恵や悪知恵を働かして財宝を得ようとする者が多い。これは誤っており、しかも迷っているといえるだろう。』
あぶない身代と手堅い身代
『師はこういわれた。千円の資本で千円の商売をするときは、ほかから見てあぶない身代という。千円の身代で八百円の商売するときは、ほかから見て小さいけれど堅い身代という。この堅い身代といわれるところに、味わいもあり益もある。それを世間は百円を元手にして、二百円の商売をする者を働き者という。大いなる間違いだ。
※脇屋意見
『この手堅い商売』には異論があると思う。いまの社会での商売の仕方は、少ない資本をいかに活用して利益を上げるか・・・と思っている方が多いのではないかと思われる。しかし現実は、出店したかと思うと三年も経たない内に閉店したり、最近倒産件数が増え続けている。これは正に千円の身代で千円以上の商売をしているから、歯車が一つ狂えばガタガタと崩れてしまうのである。
だから、現代風にいう手堅い運営とは、経理上でいうならば、毎日、或いは毎月の自店または自社での経営損益分岐点を確り把握して勤めることを守ることが大事である。