本文:『曲礼篇にいう。人は目のつけ所が大切である。相手に対する目のつけどころによって、その人の心中がわかるからである。およそ視線が対手の顔面より上にあるときは、その人が傲慢の念を抱いているのであり、帯より下にあれば、心に憂いを抱くことを示す。頭を傾け視線を左右にするようなのは心の正しくないことをあらわす』
脇屋解説
「目を見ればその人の心が分る」といわれるように、毎日の生活の中で、お互いにそんな経験は幾度もあると思います。例えば、子供が親から叱られるとき、都合が悪くなると、子供は親の目をそらし下を向きます。「頭を上げてしっかりお母さんの目を見なさい」などといって、人との接し方を教えます。
本文にあるように、「相手に対する目のつけどころによってその人の心中がわかる」また、「視線を左右にするようなのは心が正しくないこと」なと動作を具体的にあげられています。子供の育成、社会での人々との接し方など、心して行動しなければなりません。
本文:『儀礼』の士相見礼篇にいう。人と話をするには、相手の人の本務とすべき道に関して語るのをよしとする。すなわち人君と語るには、臣下を使う道、その苦辛などについて話し、丈夫などの大人に対しては、君に事える心得、経験などにつき語り、老人に対しては、子弟にはいかに使うべきかの問題を、その子弟たる幼者に対しては、その父兄に孝弟を尽くす道について語る。また、一般の人と語るときには、社会生活の原則たる忠、すなわち自己の心を尽くして人のために謀ること、信、すなわち人との約束を違えないこと、慈、すなわち人に対して温情をもつこと、祥、すなわち鬼神から福をうくべき善行などについて語り、官職についているものに対しては忠と信を忘れない心得について語るべきである。』
この文は人と話合いをするときは、相手と自分の立場を理解して、話の範囲や話の筋道を間違えないようにして、お互いの話が成立するように、それぞれの立場の話し方の道を諭された文面です。