養生の戒め

DSCN1788.JPG貝原益軒【養生訓】より

『過酒食と薬』 

酒食をすごして腹痛になったときは、酒食を消しさる強い薬を用いないと酒食を消化できないものだ。たとえば、敵軍がわが領内に乱入し、戦をいどみ、城を攻め破ろうとした。そのとき、こちらからも強兵を出して防戦し、敵に勝つためには味方の兵士も多く討ち死にしないと勝てないようなものである。さながら、薬を用いて食物を消化させるのは、自分の腹中を敵味方の戦場にするのと似ている。
飲食した酒食が敵と化して、わが腹の中を責め破るのみでなく、自分が用いた強い薬も、みな病気を攻撃しようとするから元気をへってしまう。敵も味方もわが腹中で乱戦し、元気をはなはだしくへらす。
敵を自分の領内に引きこんで戦うよりは、領外で防ぎ、侵入させないことがもっともよい。酒食をすごさないでひかえめにすれば、敵にはならない。強い薬を用いてわが腹中を敵と味方の合戦場にすることは、胃の気をそこなってしまう。残念というほかはない。
 

『夕食は軽く』

夕食は朝食よりもとどこおりやすくて消化しにくい。だから夕食は少ないほうがよい。軽い薄味のものを食べるがよい。夕食に副食物の数の多いのはよいことではない。副食物を多く食べるのは禁物である。
魚や鳥などのように味が濃く、脂肪が多くおもいものは夕食にはわるい。菜類も、山芋、人参、白菜、芋、くわい、などの品は、とどこおりやすく気をふさぐものだから、夕食に多く食べてはいけない。食べなければそれがもっともよい。

『持病と食べ物』

すべての宿疾を起こすものを書きとどめて決して食べてはいけない。宿疾とは持病のことである。食べてその場で害になるものがあり、また時を経て害になるものもある。即時に害にならないからといって食べてはならない。
 

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